全国の会

2024-01-03掲載

映画「わが青春つきるとも…伊藤千代子の生涯」の生命力
―新年にあたり、草の根上映会を呼びかけます―

畑田重夫記念「映画製作(上映)を支援する全国の会」
▲「千代子未来へ」映画のエンドロールシーン

 22年4月から開始された映画「わが青春つきるとも―伊藤千代子の生涯」の全国自主上映は、1年9ヵ月というロングランに入り、全国46都道府県に拡大、500会場・9万人の鑑賞者を生み出すという、独立プロ映画運動の画期を創り出している。

 数年前までは伊藤千代子の名前は知っていても、その活動経歴や100年前の人民運動の具体的イメージのない世代にとってはなじみの薄い女性でした。
 さらに民主的映画運動を担ってきた人々の一部に「無名・暗い・重いテーマ」のこの映画は成功しないのではないか、などいう予測も手伝って、2019年時点では、その成否は誰も予測できないものであった。

 しかし、主人公がわが国初の女性の治安維持法弾圧犠牲者で、そのたたかいの途上、24歳で非業の死を遂げた衝撃的事実が知られるに従って、この女性を主人公にした映画化を、わが国の人権後進性を糺すべく起ちあがって55年の歴史を持つ治安維持法国賠同盟が主唱し、自覚的民主勢力との協同が全国各地で実現した。

 22年前半は、これまでも自主上映会の経験のある地域が先行し、後半には近年初めて実行委員会を作って上映に挑む地域にまで拡大した。23年に入ると、歴史上はじめて上映会をもつ地域にまで前進している。

 こうした映画運動のスパイラルは、この映画が持つ生命力あってはじめて実現したものである。では、この生命力とは何か。

①それはこの映画が、治安維持法と特高警察の弾圧に斃れた伊藤千代子とともに立ち上がった20歳代の女性群像を主人公にした戦前の困難な闘いを正面から描き、とりわけ獄中闘争を克明に描くという類を見ない映像化に成功したことにある。
 またジェンダー平等への先駆的闘いが描かれたことが多くの人々の共感をよび起した。
②この映画は見る人をして、「自分の生き方はこれでいいのか」と問いかけるものとなった。 とりわけ、体制に順応して生きるのでなく、社会に能動的に働きかけていく、そのことにより「社会をりよく変え、社会進歩に貢献する」ことができるという人間本来の生き方を問いかける内容となっているからである。
 それは、感想文の多くが感動と共感をもって書かれていることに示されている。感想文の提出率も例を見ない高率となっている。
③「重いテーマ」を明るく前向きに、メッセージ性を込めた映像化に成功している。
④この映画をもっと多くの人々に観てもらいたいという鑑賞者の自発性・伝播性をよび起していること。そして、日本中に平和と人権の基礎体力を強固に創って行く活動に貢献していける映画だという自覚性を生み出しつつある。

 2024年への抱負

 こうした好循環と広がりは各地で有権者比1000人に1人を超える所まできた(長野県は3.5人、小豆島では200人に1人という拡がりを生み出している地域も生まれている)。

 今年は、いよいよ映画を待ち望んでいる全町村やサークル、諸組織の支部・分会などの小単位にまで拡大し、鑑賞者10万人の大台をこえて情勢を撃っていきたい。そのために、
①上映債権無しでの上映会を可能とする、
②字幕版DVD&BD(ブルーレイ)を15日間貸与し、地域巡回(何回でも上映可)を可能とする。
③サークルや各組織支部単位の小人数上映会にも対応する。
④参加人数×1000円×60%を監督側に、40%が主催者側に帰属する方式を採用する。
自前のプロジェクターなどを使えば10人、20人でも開催可能な、持続可能な方式とする。
などの新方針の実践に入っている。

 兵庫県では但馬地域で(エリア上映会として)5回の連鎖上映会の実験に成功し、滋賀県は上映の輪で琵琶湖を繋げようと新たな実践に入っているし、北海道では、道内179全自治体での上映会を企図し、追求している。

 こうして映画上映運動は、3年目を迎えている。

 この時にあたり、私たちは今、かつて山本薩夫監督など独立プロのリーダーたちが試みた「この映画を持って民衆の中へ」という実践を今日に活かすべく決意している。

 この2年間、日本中の大・中都市での上映会を中心に500会場での上映会を積み上げてきた。その経験を活かしつつ、全国の小地域・小単位まで草の根の上映会を持続させていく年にしたい。

私たちは呼びかけます。
「この映画を待ち望んでいるすべての人々に届ける。映画が、待ち望んでいる人々のところに出かけて行く」

こうした前人未到の展開を必ず成功させたい。

 映画「わが青春は‥‥」はそういう生命力を必ず発揮するだろう。そのことが「金権腐敗の政治情勢を撃ち、社会に能動的に働きかけていく仲間を増やし、平和と人権の基礎体力創り」に貢献していくものと確信する。

2024年 1月
畑田重夫記念「映画製作(上映)を支援する全国の会」

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